| [次] | [前] | [もくじ] | 本 棚 | トップ |

#1244/1770 研究室「パンドラの箱」 ★タイトル (QYA33902) 96/11/ 1 17: 1 (118) ニツコー>66Q&A29番              三鷹板吉 ★内容 29.なぜナチスは、大量絶滅にもっと適当なガスの替わりに、シアン化水素を使用   したのか? *IHRの主張  もしもナチスが人々を絶滅するためにガスを使おうと意図していたならば、ずっ と有効なガスが入手可能だった。チクロンBは、燻蒸用として使用する場合以外は まったく有効ではない。 *ニツコーの回答  嘘だ。チクロンBの使用は部分的だったが、その理由はそれが人間を殺すのにあ まりに有効だったからだ。真実、比較的より有効な他のガスがないわけではない。 だがチクロンBは、以下の2つの有利な点によってきわだっていた。   ●チクロンBは、梱包し貯蔵し輸送するのがたやすかった−−それはごく普通   の化学メーカーにも発注可能であり、スズ缶に密閉されて届けられた。   ●チクロンBは、害虫駆除のために使用されていたから、広く入手可能だった。   事実、アウシュビッツで使用されたチクロンBのおよそ90%は、害虫駆除目的   で使われた。一例として、グットマンの「アウシュビッツ 死の収容所の解剖   学」 1994年 p.215を見よ。  疑問28への回答で記したように、それは大量殺人にはきわめて有効だった。事実、 チクロンBから遊離するガスであるHCN(シアン化水素=青酸ガス)は、今日で も合衆国で死刑囚を処刑するために使用されている。  公正を期するために、今日の処刑用ガス室は、化学反応によってHCNを発生さ せていることを指摘しておくべきだろう。チクロンBを使って行なわれたように、 単にHCNを発散させるのとは違って。だが、ナチスが使った方法でも問題は無か った。きわめて有効に作用したのだ。  ナチスにもすぐ分かったように、絶滅プロセスのボトルネックは、ガス殺それ自 体ではなく、死体焼却だった。千人の人間を殺すのは、およそ数十分、あるいは1 時間、最大でも2時間で可能だった。この時間には、収容所への到着から、ガス室 の最終換気までの全工程が含まれている。  だが、この千体の死体を焼却するには、たいへんな時間と労力がかかった。大規 模で高価な焼却炉が購入され、それらを維持するために多額のマルクが費やされた が、それでも死体焼却には、人々の虐殺よりも、最低でも10倍の時間がかかった。 ボトルネックが常に焼却炉の処理能力であることをナチスが理解した後は、ガス室 のサイズが縮小されさえしたのだ。−−グットマンその他を見よ。(「アウシュビ ッツ 死の収容所の解剖学」1994年 p.224)  だから、ガス殺プロセスの困難さやガスの有効性についての議論は、読者の注意 を他にそらそうという意図によりなされているものだ。アウシュビッツFAQ(三鷹 注:ニツコーが提供している文書ファイル)の該当部分を参照せよ。  なんにせよ、もしも「ずっと有効な」多種のガスが存在するとするならば、なぜ IHRはそのいくつかの名前なり挙げないのだろう? IHR所長グレッグ・ラビ ンは、1994年から95年にかけて、ユーズネットで、まさにこのことを求められた。 さんざん求められた末に、ラビンは以下のようにしか述べられなかった。    一酸化炭素は、たとえば、多数の神経ガスのいずれもと同じように、チクロ   ンBより早く作用する。  すでに説明したように、殺害のスピードは、虐殺プロセスのボトルネックではな い。どのガスがより「早い」か論じるのは、ポイントを外している。それはそれと して、一酸化炭素は実際は、HCNより「早く」は作用しない。HCNは、もっと も早く作用する毒物の一つである。この問題について詳細を論じた論文を見よ。  事実、ナチスは、ラインハルト作戦において一酸化炭素の使用を試みたのだ。マ イダネク絶滅収容所においても。マイダネクでは、ビン詰めの一酸化炭素と、配管 設備が発見されている。だがアウシュビッツ所長ルドルフ・ヘスは、回想録で説明 しているように、既存の方法は十分有効ではないと分かって、替わりにチクロンB に切り換えることを決定したのだ。  また「神経ガス」というだけでは、ガスを特定したことにはならない。  特定のガスを名指しした他の唯一の例を、我々はすでに発見している。それは、 笑うべき無知の露呈である。ウォルター・ルフテルが書いた、いわゆる「ルフテル 報告」に以下のようにある。    青酸ガス(爆発性があり、きわめて毒性が強い)の取扱いにおける危険を熟   知している人間なら誰でも、なぜSSの処刑執行者たちが、チクロンで中毒死   させられたと強弁されている囚人たちを殺すのに、二酸化炭素を使わなかった   のか、との疑念を抱くことだろう。−−二酸化炭素はより扱いやすく、処刑執   行者にはまったく害をもたらさない−−    生理学の教科書ならどれでも、アノクシア(酸素喪失)実験を以下のように   確証するだろう。5秒後に脳機能への障害が現われる。続いて15秒後に意識が   失われ、5分後に脳死となる。これは動物を苦痛無く確実に眠らせる方法だが、   人間でも同様である。  まったく馬鹿げている。二酸化炭素は単に、酸素が欠乏した空気によって犠牲者 を溺れさせることにより仮死状態にするだけだ。意識喪失には15秒よりずっと長い 時間がかかる。死に苦痛がないわけではない。絞殺死や溺死とだいたい同じように 苦しいだろう。その上、二酸化炭素はビンに圧搾して輸送しなければならない。な ぜなら「ドライアイス」は、人間を殺せるほど十分すばやくは昇華しないからだ。  ガス室内の、通常の酸素を含んだ空気を完全に入れ替えるのに、二酸化炭素のビ ンが何本必要なのだろう? それらのビンを輸送し再充填するのに、どれだけのコ ストがかかるのだろう? 空気中の酸素を入れ替えるのに十分な二酸化炭素濃度を 達成する替わりに、わずか数100ppmで致死性を実現する、少量の毒物を使う方が、 よりたやすかったのではないか?  事実、フレドリック・バーグは、IHRが出版している他の小論において、二酸 化炭素を却下している。この小論はグレッグ・ラビンのウェブ・サイトで入手可能 である。    二酸化炭素は、実際、通常の水ほども有毒ではない。毒物学便覧のほとんど   は、二酸化炭素に言及すらしていない。言及されたとしても「無毒。仮死をも   たらすのみ」と一般的に分類されるだけだろう。  これもまたIHRの内的矛盾である。  この「ルフテル報告」のテキストファイルは、ニツコーでオンラインで入手可能 である。あるいはグレッグ・ラビンのウェブ・サイトのページでも可能だ。「生理 学」という単語でテキストを検索せよ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− *三鷹の感想  バーグの小論というのは「ディーゼルガス室 神話の中の神話」のこと。ディー ゼル排気によるガス室は不可能だと、詭弁を駆使して「論証」しています。不可能 かどうかは、いっぺんトラックなりバスなりの排気口にホースを繋いで、口にくわ えて15分ほど呼吸してみれば、簡単に証明できるだろうと思うのですが(笑)