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#1248/1770 研究室「パンドラの箱」 ★タイトル (QYA33902) 96/11/ 5 9:52 (134) ニツコー>66Q&A32番              三鷹板吉 ★内容 32.ヘスは告白の中で、自分の部下は、ガス殺の10分後に死んだユダヤ人をガス室   から引き出す際にタバコを吸おうとしていた、と言った。チクロンBには爆発   性があるのではないか? *IHRの主張  大いにその通りだ。ヘスの告白は、明らかに偽証である。 *ニツコーの回答  さて、これこそまったくのナンセンスだ。  爆発を引き起こす最低濃度は56,000ppmだ。それに対して、人間を数分で殺す濃 度は300ppmだ。参考文献として「メルク・インデックス(The Merck Index)」「C RC化学物理便覧(CRC Handbook of Chemistry and Physics)」がある。あるい は、化学物質の毒性と可燃性に関するどのマニュアルを調べても分かるだろう。仮 に処刑が行なわれている最中のガス室の中で焚火が燃やされていたとしても、爆発 の危険性などまったくなかったことだろう。  事実、ナチス自身のチクロンBについての製品文献である、ニュルンベルグ文書 NI-9912でも、この点を明らかにしている。    爆発の危険性:1立方メートルあたり75グラムのHCN。通常の使用では1    立方メートルあたり約8グラムから10グラムであるから、爆発性はない。 (ところで、この1立方メートルあたり8グラムから10グラムというのは、人間で はなく、シラミや他の昆虫を絶滅させるために必要とされた濃度である。哺乳動物 には、ずっと低い濃度と短い時間で十分なのだ)  NI-9912文書の転載はブラッドリー・スミス(三鷹注:ホロコースト否定者の一 人)のウェブ・サイトで入手可能である。ついでながら、以上の疑問も含まれてい る。ゆえに「リビジョニスト」は明らかにNI-9912文書が存在することを知ってい るのだ。彼らはただそれを無視しようと決めたのだ。スミス氏はNI-9912文書を「都 合が悪い」ものだと称している。−−そうかもしれない。……だが、誰にとって?  どのケースにおいても、10分間の換気プロセスによってガス室が十分無毒になる まできれいにされてしまった後に、ガスが爆発するとでもというのか? 万に一つ もない。もしもゾンターコマンドがタバコを吸っていたならば、彼らは明らかにガ スマスクを着用していなかったということになる。つまり、ガスの濃度が100ppmよ りずっと下がっていなければ、どのみち彼らは死んでしまった、ということになる のだ!  なんでまたIHRは、爆発の可能性があるなどと主張して読者を惑わせようとす るのだろうか? 爆発を引き起こすほどHCNが十分近くにある場所ならば、タバ コを吸おうとする人間は、どのみちその毒で、とうの昔に死んでいることだろう!  IHRは基本的な文献参照作業を無視し、ナチス自身が爆発可能性を却下してい るということに注目するのも怠り、常識さえも放棄してしまったのだ。IHRの学 識レベルについて、とてもよく分かろうというものだ。  さらに、ちょっとした余談であるが……  このことは同様に、IHRの誠実さに関しても、何ほどかを示しているようだ。 IHRがここでNI-9912を無視し、それを都合が悪いとしているにも関わらず、I HRは実際に別の出版物でNI-9912文書を利用しているのだ。グレッグ・ラビンの ウェブ・サイトで入手可能な、いわゆるルフテル報告は、NI-9912文書から、引用 と明記せずに、数字を取り上げて示している。以下の如く:    チクロンBの発散には、天候によって、気温摂氏5度から30度の間で、最短   6時間から最長32時間かかる。  つまり、IHRは自分の目的に合致する場合にはNI-9912文書を引用し、合致し ない場合には無視しているのだ。ホロコースト「リビジョニズム」がどんな代物な のかよく分かろうというものだ。  この話題に関する限り、IHRの論述はそれ自体、見えすいた学究的不誠実であ ると言ってさしつかえないだろう。NI-9912文書は、温度による6時間から32時間 という数字に言及している。だが、これらの数字は、昆虫が死ぬまでにどれだけか かるかということであり、チクロンBの発散に要する時間とは関係がない。以下が、 押収されたナチス文書のオリジナルテキストである。    効果を発揮するのに必要な時間:16時間。ただし、密閉型の建物のような特    殊な環境ではより短い時間である。気候が暖かければ、最短の6時間まで時    間を短くすることも可能だ。気温が摂氏5度以下ならば、時間は少なくとも    32時間まで延長しなければならない。    上記の効果と時間が適用されるのは以下の対象についてである:虫、シラミ、    ノミその他。それらの卵、幼虫、サナギ。  繰り返すが、以上はブラッドリー・スミスのウェブ・サイトで入手可能であり、 「都合が悪い」と称されている。−−繰り返すが、誰にとって都合が悪いのか? −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− *三鷹の感想  NI-9912文書の「必要時間」について、ちょっと補足する必要があるでしょう。 なぜ否定者は、この数字が「都合が悪い(inconvenient)」と評したのか? もち ろん彼らはガス室の論証にとって都合が悪く、「ガス室否定」にとっては都合がい い、と言っているワケです。  ホロコースト否定者はこの「時間」を二通りに曲解して、それぞれ「アウシュビ ッツのガス室は不可能だった」という決めつけの「論拠」としているようです。  その一つは「HCN(青酸ガス)が発散するのに必要な時間」という曲解。開缶 されたチクロンBから青酸ガスが出るまでに最低6時間もかかるのならば、数分で 全員を殺したというガス室など不可能だ、というワケです。このことと関係あるの でしょうか、否定者の一人である西岡さんは当初「加熱の必要性」を強調していま した。で、ガス室内に加熱装置が取り付けられていたという証拠もなければ、証言 すらないのは、ガス室が捏造されたものだからだ、との主張です。その後、西岡さ んはこの主張を撤回したようですが、彼はもう一つの別の曲解も「採用」していた ワケです。  もう一つの曲解は「HCNが完全に発散しきるまでに必要な時間」というもので す。ガス室内の人間を殺した後も、チクロンBは最低6時間にわたってHCNを発 散し続けているのだから、ガス殺後30分でドアを開け、死体を運び出すなど自殺行 為だ、というワケです。  興味深いのは、前者と後者でチクロンBの特徴が正反対であることです。前者に おいては、チクロンBは「安全な殺虫剤」であり、それで人間を大量殺戮するなど とうてい無理、という「結論」になります。後者においては、チクロンBは「危険 すぎる毒物」であり、殺戮後のすみやかな死体処理などとうてい無理、という「結 論」が導き出されるというワケです。  「結論」が先にあって「解釈」が後から追っかけてきている、との印象を抱くの は三鷹一人ではありますまい。  では、NI-9912文書が述べていない「発散の必要時間」とは、実際いかなるもの だったのでしょうか? 以下の引用は、否定者自身の弁による解説です。    チクロンの小粒の、または紙製のディスクからシアン化水素が蒸発する速度   は、瞬間的ではない。シアン化水素はチクロンBの缶が開けられるやいなや、   ただちに多孔性の素材から遊離しはじめるが、すべてが一時に遊離するわけで   はない。むしろ逆に、通常の条件で、68度F(20度C)ぐらいの通常の室温の   場合、ほとんどのシアン化水素が遊離するのには約半時間かかる。チップから   すべてのシアン化水素が遊離するには、さらに時間が必要である。              (フレドリック・バーグ「ドイツのシラミ退治消毒室」                木村愛二「アウシュビッツの争点」 pp.213-214)  裸の人間が立錘の余地さえないほどギッシリ詰めこまれたガス室内部の気温は、 摂氏20度を優に越え、摂氏30度近くまで上がっていたと推定されています。  否定者の一人であるバーグの記述と、疑問32番の回答と併せ読めば、結論はおの ずと明らかだと思います。