酒の割り方
(99/12/05)
「酒はアルコール度数が高ければ高いほど旨い」と主張するひとがいて、三鷹もなるほどそうかと頷いていた頃、まあ、若い時分だが、実にとんでもない飲み方をしていた。
60度ぐらいのウオトカを冷蔵庫のフリーザーに入れておく。水ならたちまち凍って膨張し、ボトルを割ってしまうが、アルコール度数の高いウオトカは凍らない。ボトルを取り出すと、ガラスの表面に空気中の水分が凝結して凍りつき、真っ白になる。マイナス10数度でトロリと粘性を帯びたウオトカを、これもフリーザーで凍らせておいたシングルショットグラスに注ぐ。そして、一気に飲み干す! 舌に触れた氷より冷たい液体が、喉をくだり、胃袋の手前まで来たあたりで、いきなり炎の塊になる。石炭ストーブにガソリンを放り込んだような感じだ。尾てい骨から脳天に響くような感覚は、旨さというにはちょと過激すぎた。
ウィスキーでもストレートが一番旨いと信じ、水で割るなど、酒の旨さを知らぬ邪道の所業と笑い、ロックにした場合も、氷の形が変わらないうちに飲み干すのを常としていた。
なるほど、旨いと言えば旨いのだが、こういう酒の飲み方をしていると、確実に寿命が縮む。5年ほど前からは、ストレートで飲むのは日本酒とワインとビールのみ、蒸留酒はすべて水かお湯で割り、ゆっくりダラダラと飲むように心掛けている。
この「ストレート志向」というのは、一つには欧米人の酒の飲み方から来ているように思う。連中は基本的に酒が強く、飲み方が半端じゃない。平均的日本人がビール1本飲む程度の感覚で、ワイン1本を空ける。日本人がワイン1本空ける間に、ウオトカが1本空になる。ビールならケース単位で飲むんじゃないか? そういうのが本場の飲み方と感嘆した(あきれた?)結果、ストレート=本格派ということになってしまったのではないだろうか。
しかし、同じ欧米人でも、紀元前のギリシャ人は、現代日本人的な酒の飲み方を習慣としていたようだ。彼らはワインを水で割って飲んでいた。「食卓の賢人たち」(アテナイオス著 岩波文庫)という本にそんな記述がある。割り方は、一番薄いのがワイン1に水が4。他に1対3、2対5、1対2、3対5、3対2、2対1という割り方が、それぞれ典拠をつけて紹介されている。もっとも、これは飲んでも酔わないための作法であり、積極的に酔っ払おうという人間は、生のワインをがぶのみしていた。
フランス、イタリアなどラテン諸国では、小学生にもワインを飲ませるそうだが、それも水割りが普通らしい。そもそもワインを飲むのは、アルコールを摂取して酔うのが目的ではなく、生水の殺菌消毒が目的だったのだろうか?
厨 房へ。
トップへ。