「銃士」って何だ?

(2000/04/01)

 デュマの「三銃士」の「銃士」である。もっぱらフェンシングのように剣で戦ってるイメージなのだが、なんで「剣士」ではなくて「銃士」なんだろう?

 「三銃士」のジュヴナイル版を読んだ小学生の頃から、何とも不思議でたまらなかった。大人に聞いても答えは得られなかった。で、こどもなりに以下のように考えた。「銃」と言っても西部劇や戦争映画のようなガンを意味する言葉じゃなく、別に意味があり、「銃士」という熟語で「ああいうヒーローたち」を指す独特の用語なのだ。その証拠に、「三銃士」の他に「銃士」なんて言葉を目にすることは無いではないか、と。(例えば「襲名」と言っても、別に「親父を襲撃してその名前を奪取する」てな意味じゃないように、だ)

 それで30年近く納得していたのだが、何年か前に「三銃士」がハリウッド映画になり、その原題(英語)が「The Three Musketeers 」と知って、疑問が再燃した。マスケッターのマスケットというのは、マスケット銃のことじゃないか。火縄銃とライフルの中間みたいなゴツイ鉄砲だ。「銃士」の「銃」は、やっぱ鉄砲のことだったんだ。それがなんで「事実上の剣士」だったのだろう? ちなみに原作小説は「Les Trois Mousquetaires 」。英題は直訳だ。日本語(?)の「三銃士」もそう。

 この疑問は、現在なお解決していない。しかるべきところに問い合わせるなり、学問レベルでちょと丁寧に調べれば簡単に判明するだろうと思うが、あえてせずに、この疑問とダラダラと付きあい続けている。その間に、断片的な雑学的知識は幾つか耳に入って来た。メモ書きを元に簡単に記しておこう。

 原作小説が発表されたのは1844年だが、作品の舞台はそれよか200年前の17世紀初頭、ルイ13世の時代である。要するに「時代劇」として発表されたのだ。現在日本における時代劇と歴史的事実との距離を考えれば、デュマの小説と史実との距離も、相当なものだったのではないか?

 ところで、騎士道の伝統を有するヨーロッパにおいて、「銃」は許し難い武器だった。「飛び道具は卑怯なり」というのは、実は日本よりもヨーロッパの感覚だったのだ。近世ヨーロッパでの戦争における捕虜は、身代金を取る関係もあって概して大切に扱われたが、銃兵は例外で、卑怯な武器を用いた屑野郎として、相当残虐な扱いをされたようだ。

 その銃兵が、どのような経緯でもって、田舎青年ダルタニャンの憧れの対象である、誉れ高き「近衛銃士隊」にまで出世したのだろうか? また、デュマが「専ら剣で戦う銃士」を描いた背景には、「銃は卑怯な飛び道具であり、剣こそが高貴な武器である」てな感覚が存在したのだろうか?

 ご存じのかたがいらっしゃったら、ぜひご教授いただきたい。

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