石原「『三国人』発言問題」は朝日の世論誘導
(2000/04/13)
またまた朝日新聞がお馴染みのスタイルでやらかしてくれた。話題がホットなうちに、「朝日流世論誘導の手口・最新版」を検証しておこう。
まず問題の石原慎太郎東京都知事発言である。4月9日、陸上自衛隊練馬駐屯地の創隊記念式典での演説だ。以下、新聞記事から全文引用する。
本日は陸上自衛隊、そして第一師団の創設記念にお招きいただきまして、ありがとうございます。そしてこの機会に国民、都民を代表しまして、皆さんへの大きな期待を述べさせていただきたいと思います。
今日の日本を眺めますと、残念ながらどうも国の外側も内側もたがが緩んできたなという感じを否めません。ずうたいの大きな経済国家でありますけど、この日本の姿、社会に起こっている出来事を眺めますと、何か肝心なものが欠けてしまっているという感じが否めません。私たちのうちに、自分たちが属する伝統のある、力のあるこの日本という国家社会に対する意識がどれほどあるかな、という疑問がわいてまいります。
国家の国民に対する責任の最大のものは、国民の生命と財産を守るというのは、自明なことであります。そしてまた、国民もそれを期待するがゆえに国家というものに対する責任、あるいは忠誠というものをですね、抱いているに違いないが、しかし、残念なことに今日の日本の政治を眺めますと、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に拉致されていった、いたいけないあの少女一人を救うこともできずにいる。これは政府の責任であると同時に私は国民一人ひとりの責任というものが結束していない、その証左ではないかという気が強く致します。
まあ、あまり物騒なことは申しませんけれども、私たちどうもですね、この敗戦後の五十年間、実に見事に内側からも外側からも解体されたという気が致してならない。
私の友人でありました評論家の村松剛君が交換教授に行った帰りに、ニューヨーク・タイムズに寄りまして、私たちが戦争に敗れた時の八月十五日、向こうの十四日のニューヨーク・タイムズの論説、そして数カ月前ドイツの敗れた日の論説をコピーして持って帰ってくれました。私とこれも今は亡き三島由紀夫さんに一つの資料としてくれた。
非常に対照的なことに、ドイツの降伏は当たり前に扱われておりますが、日本の降伏の場合には非常に醜い大きな怪物の姿が、そのあんぐり開いた口からアメリカの兵隊が三人でやっと大きな牙を抜いている。そしてその解説に、この怪物は倒れはしたがまだ骨と牙は抜き去られていない。われわれは永久にかかっても、この解体をアメリカのために世界のためにするんだ、という記事がありました。
彼ら白人にとってみると、日本人だけが有色人種の中で唯一見事な近代国家をつくったというそのものが、意に沿わない事実だったのでありましょう。ゆえに、この日本((産經では「この辺」)を非常に危険視したアメリカは、あのいびつな憲法に象徴されるようにこの日本の解体を図って、残念ながら、その結果が今日露呈されていることを、だれも否めないと思います。そういう中で皆さん、ある意味で社会の中で孤絶された形で、場合によっては白眼視されながら日々精励され、この国家をいったん緩急の時には守る、国民の生命を守る、財産を守るために精励していらしゃる。これは当たり前のことであると同時に、実は日本の社会の中にとってはけうなることであると、残念ながら思わざるをえない。どうか一つこういった状況に決して屈することなく、いったん緩急の時に崇高な目的を達成されるために精進を続けて頂きたいということを、改めてこの機会に国民、都民を代表して熱願する次第でございます。
先ほど、師団長の言葉にもありましたが、この九月三日に陸海空三軍を使ってのこの東京を防衛する、災害を防止する、災害を救急するという大演習をやっていただきます。今日の東京を見ますと、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪をですね、繰り返している。もはや東京における犯罪の形は過去と違ってきた。こういう状況を見まして、もし大きな災害が起こった時には大きな騒擾(そうじょう)事件すらですね想定される。そういう現況であります。こういうものに対処するためには、なかなか警察の力をもっても限りとする。ならばですね、そういう時に皆さんに出動願って、都民のですね災害の救急だけではなしに、やはり治安の維持も、一つ皆さんの大きな目的として遂行していただきたいということを期待しております。
どうか、この来る九月三日、おそらく敗戦後日本で初めての大きな作業を使っての、市民のための、都民のための、国民のための大きな演習が繰り広げられますが、そこでやはり、国家の軍隊、国家にとっての軍隊の意義というものを、価値というものを、皆さんが何といっても中核の第一師団として、国民に都民にしっかりと示して頂きたいということを、ここで改めてお願いし、期待して、本日の祝辞と、そしてまた、皆さんに対するお礼と期待の言葉にさせていただきます。頑張って下さい。
「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)」との記述で想像がつく通り、朝日新聞の記事である。演説の3日後の4月12日付朝刊に掲載された。(※注:グリーン部分が朝日。ブルー部分は4月13日付産經朝刊の記事によって補筆)
さて、この演説を、朝日以外の新聞はどのように報道しただろう? 産經新聞4月10日夕刊の記事は以下の通り。
石原知事 治安維持に自衛隊必要 練馬駐屯地創隊式典に出席
東京都の石原慎太郎知事は九日、陸上自衛隊練馬駐屯地(東京都練馬区北町)の創隊記念式典に都知事として初めて出席し、あいさつで凶悪な不法外国人犯罪の増加を指摘し、「治安維持にかかわる緊急事態が生じた場合には、自衛隊の協力が必要」と訴えた。
石原知事は最初に「今日の政治を眺めると、北朝鮮に拉致(らち)されたいたいけな少女一人を救うこともできない。政府の責任であるとともに国民一人一人の責任というものが、結束していない証左であるのではないか」と横田めぐみさんの事件を例に日本の現状に憂慮を表明。
自衛隊については「国民の生命を守る、財産を守るという崇高な目的を達するために、精進を続けていただきたい」と存在意義を強調した。
さらに「不法入国した多くの外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している」と指摘し、「大きな災害が起きたら、もっと大きな騒擾(そうじょう)も予想される。警察の力を持っても限りとし、災害だけでなく、治安の維持も大きな目的として遂行していただきたい」と話した。
東京都は今年九月三日に自衛隊と協力して、大規模な災害対策訓練を実施するが、石原知事はこの日のあいさつの中で同訓練を「大きな三(陸、海、空)軍を使う日本で初めての市民のための、都民のための、国民のための演習」と位置づけ、「(同訓練で)国家にとっての軍隊の意味というものを、国民に、都民に、しっかり示していただきたい」と語った。
短い記事の中で、演説の要点を的確にまとめている。「三国人」という言葉を削っている点にも注目したい。(この言葉の意味については、後に考察する)
同じ演説についての報道が、朝日新聞4月10日夕刊だと、以下のようになる。
三国人ら凶悪犯罪…災害時 騒げば治安維持を 石原知事、陸自式典で発言 防災訓練は「3軍演習」
東京都の石原慎太郎知事が九日、陸上自衛隊練馬駐屯地で開かれた「創隊記念式典」に出席し、あいさつの中で「三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返しており、大きな災害では騒擾事件すら想定される。警察の力には限りがあるので、みなさんに出動していただき、治安の維持も大きな目的として遂行してほしい」などと発言した。自衛隊法では、都知事は自衛隊の「治安出動」を首相に要請する当事者であり、在日外国人を中心に強い批判が起きている。
また、石原知事は「米国は日本を骨抜きにしようといびつな憲法を作り、その結果が今日露呈している」などとし、知事の提唱で九月に都と自衛隊が防災訓練を実施することを指して、「九月には陸海空の三軍を統合して大演習を行う。国家にとっての軍隊の意味を国民、都民にしっかり示してほしい」とも述べた。
「(第)三国人」という言葉は、日本統治下にあった在日朝鮮・韓国人や台湾人を指す言葉として敗戦直後に使われ、独立民族としての地位をあいまいにする差別語とされている。一九二三年の関東大震災の直後には、「朝鮮人と社会主義者が暴動を起こしている」というデマがもとで、関東地方を中心に朝鮮人が軍隊や警察、自警団によって虐殺された。その数は六千人を超えるとされる。
自衛隊法の規定では、自衛隊の治安出動は、警察力で治安を維持できない緊急事態に首相が直接命令する場合のほか、都道府県知事が首相に出動を要請することもできる。
この朝日夕刊の記事が、おそらくは故意に、報道から欠落させたもの、報道に付加したものは一目瞭然である。
欠落させたのは「北朝鮮による少女拉致」と「不法入国者」だ。付加したのは「関東大震災の朝鮮人虐殺」。そして産經とは逆に「三国人」という言葉を見出しにまで使い、「差別語」との解説を付け加えている。
石原演説によれば、北朝鮮に拉致された少女を救えないのは、政府の責任であると同時に個々の国民の責任が未結束であるからだ。そして、なぜ未結束かと言えば、敗戦後、アメリカが日本の解体を図った結果である、とする。そのような情けない日本において、国民の生命を守る、財産を守るために日々がんばっているのが、陸海空の三軍(自衛隊)である、とした上で、不法入国者による凶悪犯罪が増加している東京の現実と、災害時の騒擾の可能性を指摘し、警察力には限界があるから、自衛隊にも治安維持のために働いてほしい、と続ける。で、この秋に都と自衛隊で行う災害対策訓練で、軍(自衛隊)の存在意義を都民に示してほしい、とまとめる。こうした主張自体の是非はともかくとして、論の筋道は通っている。
ところが朝日夕刊の記事を読んだ限りでは、石原が「外国人が凶悪犯罪を繰り返しており、大災害の際には騒擾事件を起こすだろうから、自衛隊の治安出動を要請する」と薮から棒に言い出したように読める。さらに石原は「いびつな憲法を押しつけて日本を骨抜きにしたアメリカ」てな陰謀論を信奉し、「三軍の大演習により軍の価値を国民に示せ」と自衛隊をアジり、「三国人」という差別語を使って在日韓国・朝鮮・台湾人を差別するトンデモ都知事であるかのようだ。その上で、トンデモ知事の要請により治安出動した自衛隊は、「関東大震災の朝鮮人虐殺」を再現するかもしれない、と読者に暗示している。
石原が「三国人」という言葉を使ったのは事実である。「現行憲法はアメリカの押しつけ」というのも「自衛隊はレッキとした軍隊」というのも石原の年来の持論である。
そこで朝日は、まず「少女拉致」という読者の琴線に触れる部分は割愛し、「不法入国者」という限定を省いて、対象が外国人一般であるかのように見せかける。そして石原発言のパーツを再構成し、「石原慎太郎=反米&軍国主義&外国人差別者」と読者にイメージづけ、「朝鮮人虐殺」への連想に読者を導こうとしている。
朝日が石原演説の内容をキチンと紹介したのは、この夕刊が出た2日後の、4月12日の朝刊である。最初に「トンデモ都知事」のイメージを植え付けられてしまった朝日読者は、演説を公平に読むことができたとはとても思えない。
こうした朝日のやりかたは「報道」ではない。石原への中傷を目的とした世論誘導である。
石原慎太郎は、東京都民が民主的な選挙により選出した都知事である。朝日新聞の中傷は、石原ひとりにとどまらず、東京都民全体に向けられているのだ。さて、いかに対処すべきだろうか、都民諸君?
ちなみに「三国人」だが、敗戦後初めて使われるようになった言葉であり、「日本人=敗戦国民」「アメリカ人=戦勝国民」に対して、どちらでもない「第三国の国民」という意味であろう。また、例えば闇市を暴力で牛耳る民族グループを「**人」と特定することを避けるため、一種の言い換え語として使われた可能性もあると思う。「少なくとも戦勝国民ではない」という含みがあり、日本の敗戦を期に独立した自国も戦勝側であると主張する民族グループへの批判的意味合いを汲み取ることもできる。が、「独立民族の地位をあいまいにする差別語」との朝日の解説は、民族グループ寄りの解釈が勝ちすぎているように思う。
石原自身、闇市時代を肌身で知っている世代だから、当時の暴力的な民族グループと、現在の、例えば蛇頭のようなマフィアのイメージが重なって、「不法入国した三国人」という言い回しになったのではないだろうか。少なくとも、現在日本に定住している韓国・朝鮮人を指して言った言葉とは、ちょと思えない。
おそらく無用の誤解を避けるためだろう、産經は「三国人」という言葉を記事から削った。朝日は見出しにも使い、「差別」イメージをことさらに煽り立てた。どちらが報道機関としての良識を示しているだろうか?
※追記
4月13日付産經朝刊に演説の全文が掲載されていた。朝日の記事が(中略)した部分を色を変えて補筆しておく。
本棚へ。
トップへ。