ロバを連れて行こう
(2001/03/17)
NHK教育で「むしまるQ」というこども向け番組をやっている。「ウララ」というCGキャラの猫耳少女が司会で、動物の様々な生態を、クイズや歌を交えたバラエティー仕立てで見せるという趣向だ。ウララの声を当ててるのは三石琴乃。かつて「セーラームーン」の主役を演じた声優で、おたく方面にも人気が高い。その彼女が、通常比150%ぐらいのキンキン声を張り上げてがんばっている。
先日、こどもと一緒にこの番組を観ていたら、「ロバを連れて行こう」とかいうタイトルの、フォークロック調の歌が流れた。「みんなのうた」みたいな感じで、週刊文春の「読むクスリ」みたいな単純なイラスト線の少年が、ロバに乗って荒野を旅するアニメをバックに歌われる。アップテンポの陽気な歌である。
「ロバを連れて行こう。どこまでも行こう」という元気な歌い出しはいい。やがてロバが弱り、少年はロバを降りて共に歩いていく。「ロバがダメになったら」との歌詞でロバは道に倒れて死んでしまう。
「あらまあ、可哀相に」と思う。少年はロバのお墓を作り、一人で歩き始める。少年は乾し肉を食い、皮袋から水を飲むが、どうもこれは死んだロバの肉や皮らしい。「おいおい」とツッコミたくなる。リアリズムから言えば当然のことかもしれないが、こども向け番組としては、ちょとシビア過ぎやしないか、と。
驚くのは次。「ぼくもダメになったら」との歌詞で、少年も行き倒れて死んでしまう。で、死んだ少年の魂は空に昇り、先に死んだロバの魂とともに旅を続ける……てな歌だ。
宮崎駿が以前作った「母をたずねて三千里」というアニメがあり、そのラスト近くがこんな感じだった。いよいよ目的地が近づいたアンデスの山ん中で、主人公のマルコ少年が連れたロバが、雪道に力尽き、倒れてそのまま死んでしまう。マルコはロバの死を悲しみつつ、死体を置き去りにして歩き続け、何とか助かるが、リアリズムで言ったらマルコも確実に死んだだろうな、という強烈なシーンだった。
余談だが、「母をたずねて」は主人公を徹底的にいじめ抜くアニメで、イタリア・ジェノバからアンデスまで旅するマルコはとことん苦労させられる。普通の少年だったら4、5回は死んでいるだろう。
現に、この歌じゃ、ロバを失った主人公もやがて死んでしまう。それを、あっさりと陽気に歌われて良いものだろうか、と思わざるを得ない。こどもの心に、自分自身の死をも簡単に容認する心を育ててしまわないか。例えて言えば「こども葉隠」? 危険極まりない。
ウララ三石も、こうした危険性を感じたのだろうか。「キミたちの旅はまだ始まったばかり!(だから、もしも死ぬにしてもずっと先の話なんだよ)」と一生懸命フォローしているかのようだった。
それにしても、凄い歌である。カラオケに入ったなら、いっぺんは歌ってみたい。もちろん、大人だけの席で。
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