朝の教育TV(4)

(99/07/02)

 8時11分から「いないないばあ」。「朝教育」の中で最も先鋭的な番組だ。「老舗」である「おかあさんといっしょ」と比較すると、ラジカルさが分かる。

 「おかあさんといっしょ」では、おねえさんやおにいさんや着ぐるみ(という役割の大人たち)がいる場所(スタジオ)に、こども(一般視聴者の3歳児)がやってきて、歌や遊びや体操を教わるという、設定とポジショニングがハッキリしている。

 「いないないばあ」では、場所がどこなのか良く分からない。雲や太陽や月や星など、天体のオブジェがそこかしこにあり、ハチやテントウムシのコスチュームで背中に虫の羽根をつけたこどもたちが遊んでいる。2歳ぐらいか。ちなみに、彼らは子役のプロダクションに所属するレッキとした「プロ」だ。「おかあさんといっしょ」の素人3歳児連中より若いが気合の入れ方が違う(笑) 「くぅ」というピンク色のもこもこしたマペットがキャラクターの一人で、おそらく「雲のこども」だろう。第一印象は「水子の霊」だったが(汗) 全体として「空の上の国」をイメージしているらしい。天国、もしくは誕生以前の未生の世界? ところが、他のキャラクターは、大きな犬の着ぐるみである「わんわん」と、小学生の女の子にアニメキャラのようなコスプレをさせた「りなちゃん」の二人である。どこが「空」なのだろう?

 「おかあさんといっしょ」では、「歌のおねえさん&おにいさん」に「体操のおにいさん&おねえさん(現在はバリダンスのおねえさん)」が揃っているが、「いないないばあ」では「りなちゃん」ひとりが、「わんわん」と「くぅ」を相方に歌って踊って体操もして、紙を使った工作まで披露している。「ひとりでできるもん」のまいちゃん以上の、大変な仕事量だ。まだ小さい子が、よくまあ泣きもキレもせずに一人で一生懸命がんばっているなあ、と見るたびに感心する。彼女も、もちろん立派な「プロ」なのだ。

 大人の影を極力排し、より純粋な「こども空間」を構築しようというのが、番組のコンセプトなのではないかと三鷹は推察する。こどもによる、こどものための、こどもの共和国か? うーむ、ラジカル。

 歌においても、物語的な論理展開より、感覚的表現に富んだものが多いのは、幼児番組として当然だろうが、「いないないばあ」では特に多い。それも、視覚や聴覚より、触覚や運動感覚に訴えかけるもの、例えば「プリンとゼリーが走るとプルンプルンブルンブルンゆれる」てなナンセンスかつ、優れて触覚的な歌が目につく。

 そして、歌でも体操でも「いないないばあ」という動作と言葉が何度となく繰り返される。番組の最後の挨拶は「いないなーい、ばいばーい」だ。「いないないばあ」は、この「こども空間」における重要な遊びであると同時に、日常の挨拶でもあり、世界を維持する呪文でもあるのだろう。

 三鷹んちのこどもが、いま一番気に入っている番組がこの「いないないばあ」で、オープニングから「ばいばーい」まで、TVの前から一瞬たりとも離れようとしない。大人の目から見ても、上記のごとくラジカルな番組なのだが、こどもの目にはどのように映っているのだろうか? 成長した後、この番組のことをどのように思い出すのだろう。一種の「魔法体験」か? 不思議に思う。

 番組に対して、一つだけ注文がある。「りなちゃん」のコスチュームから手袋を外してやってほしい。けして器用とは言えない小学生の手を手袋で包み、はさみやのりを使った工作をさせるのは可哀そうだ。「プロ」である「りなちゃん」本人は思っても絶対に言わないだろうから、三鷹が代わりに申し述べておく。

(つづく)

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