朝の教育TV(6)

(99/08/15)

 「おかあさんといっしょ」は、この4月に、7年振りのリニューアルが行われたのだそうだ。「だんご三兄弟」の大ヒットをとばした茂森あゆみ&速水けんたろうコンビが降番し、コーナーの多くも改変された。奇しくも三鷹がこの番組を見始めたのが4月以降なので、何が新しくて何が従来ママなのか、今一つよく分からないということを断わった上で、個々のキャラクターやコーナーについての印象批評を試みてみたい。

 最初に登場するのが、新しいうたのおねえさん&おにいさんの、つのだりょうこと杉田あきひろだ。この春音大を卒業して、いわば新卒で「おねえさん」役をゲットしたつのだは、お嬢さんタイプの可愛らしいスレンダーな女性で、好感がもてる。歌も動きもなんとも素人臭いが、前任の茂森(春先から写真週刊誌等にやたら露出していた)とはまた違った、生成りの「華」を感じさせる。

 相方の杉田はミュージカル俳優なのだそうだが、相当の苦労を積んできたひとと見た。その蓄積が如実に顔に現われている。実年齢よかフケた顔で、実年齢以下の若々しさを演じている……という印象だ。結果、そこはかとない不自然さが、オーラのようにまとわりついている。(失礼!) とまれ杉田は歌も動きも「プロ」で、安心して見ていられる。トーシロのつのだとは良い組み合わせと言えよう。

 このコンビに加えて着ぐるみキャラの「スプー」。ムーミンを黄色く塗り、腹に縞模様をつけて、耳を羽根にした、という造形。角笛のようなラッパを持っていて、それを吹くとみんなが踊り出す、という、ハーメルンの笛吹きのようなキャラクター設定もなされているようだ。三鷹的には、口がでかくてちょと怖い。こどもの頭くらい、一口でパクリといけそうだ。

 この新コンビの歌だが、どれも演出が凝っていてあきさせない。「5月のうた」だったか、いきなり土方(土木作業員)のコスチュームで登場したときには、びっくりした。つのだはミスマッチの極致だったが、杉田はハマっていた(笑) 俵万智が作詞した歌があったりして、出口はこの番組のみという狭さながら、取り入れ口は広いのだな、という印象だ。そういや「だんご」のクリエイターも、広告業界じゃ超有名なひとで、日電の「バザール猿」もこのひとの仕事じゃなかったっけ。

 続いて「やんちゃるモンチャ」という数分のショートアニメ。黄緑の子猿の「モンチャ」が、日常のアレコレで下らないイタズラを思いつき、「赤モンチャ」に変身して悪さの限りを尽くすのだが、調子に乗りすぎたり失敗したり怒られたりして、最後はシオシオノパーで黄緑に戻る、という超簡単なもの。三鷹んちのこどもは非常に気に入って、変身ポーズを真似している。

 着ぐるみミュージカルの「ドレミファどーなっつ!」は、リニューアル以前からのものだと思う。「どーなつ島」を舞台に、双子のプードルのみど・ふぁど、キツネザル(?)のれっしー、ゴリラの空男の4人が、遊んだり学んだりするという内容。キャラクターそれぞれに、それなりの設定がなされているようだが、よく分からない。

 れっしーは「元王子」だそうで、実家はお城なのだが、今はホテルとして営業しているらしい。多分、父親の王様が道楽で莫大な借金こさえて国を潰したのだろう、と三鷹は推察する。バイエルンのルードウィッヒみたいなもんやね(笑) 「ジャンボ、おら空男」と登場する空男は、気の良いゴリラの子で、父親はSLの運転手。それまでいた土地でSLが用無しになり、この島へSLと一緒にやってきた、という設定らしい。挨拶からアフリカ出身と思われるが、なんでこいつだけ名前が漢字なんだろう?(笑)

 そうしたマニアックなツッコミはさておき、本質的な指摘をしておこう。4人のうち、みどのみが女の子で残り3人は男の子だ。このみどが一番スポーツが得意で活動的で4人のリーダーシップをとっている。男の子3人はみな運痴でおとなしく編み物が趣味…という設定。なるほど今風であり、フェミニズム的見地から見てもオッケー!なのかもしれないが、これでいいんだろうか? すでにタイトルも忘れてしまった以前のシリーズには、わがままで乱暴な男の子(虎の子?)がいた。わがままゆえに他のメンバーより苦労が多く、乱暴ゆえに自分自身傷つくことによって学ぶことも多かったように思う。こうした、今や失われたキャラクターの方向性を、こども(特に男の子)から摘み取ってしまって良いものだろうか?

 てな疑問を抱きつつ、次のコーナーへ。「デポン」という、バリダンスのコーナーだ。これはしかし、最初に見た時はひたすら異様だった。まず「なぜ『今ここ』でバリダンス?」という違和感。そして番組内のコーナーとしての馴染みの悪さ。

 「タリキヨコ」という女性が踊り、スプーとこども一人がならうという構成だが、当のこどもにとっては非常に困難な経験だろう。そもそもバリダンスというもの自体、現在日本のこどもにとっては、このコーナー以外では目にすることの無い、極端に異質なものである。なおかつ、バリダンスは舞踊表現として相当に完成されたものであり、一つ一つの動作が複雑で象徴性が高い。結果、こどもがついていけない。ほとんど何も出来ずに呆然としているだけだ。

 たとえば「雨」を表現するのに、タリは、両手を上にあげ、大きく左右に波を描くようにして下におろしていく。大粒の雨が短時間に激しく振り注ぎ、カーテンのように視界を遮る熱帯のスコールを表現するのにふさわしい動作と言えよう。だが、日本の雨じゃない。「雨」に対する日本のこどもの実感とも、実感から導かれる自然な動きとも異なるように思う。

 この「デポン」が終わったあたりで、保育園へ出立する時間となる。時間としては8時45分前後か。その後も、いくつか興味深いコーナーがあり、「おかあさんがいっしょ」が終わる9時以降にも、興味深い番組があるのだが、それらについてはまた、別の機会に。

(おしまい)

本棚へ。

トップへ。