解 雇

<退職勧奨>

○退職勧奨

 退職勧奨とは会社が人員が多いと思ったときに最初に特定の従業員に「会社を辞めないか?」と退職を勧める行為です。「おまえは首だ!!」といえば、解雇ですが、「会社を辞めろ!!」という風に退職届を書かせる方向にもっていけば、退職勧奨になります。自分で退職届を書くわけですから解雇権の濫用の問題はおきません。

 そのかわり、過剰な退職勧奨が不法行為を構成して損害賠償の裁判になったり、書いた退職届が真意に基くものではないとして無効を争ったりします。

*退職届の無効を争う場合

この退職の意思表示は民法上の契約です。従って民法93条94条95条96条が適用されます。(これらは契約をする上での意思に問題がある意思表示の類型で、原則として無効や取消ができることになっています。)
具体的には。

退職の意思がないのに、「反省の意思を形にしろ!!」等といわれ、会社も実際に退職する意思がないことを知りつつ、労働者が退職届を書いて預けただけのような場合、これを退職届として会社が主張した場合はお互いに真意に基く意思表示でないことを知っていたので「心裡留保」(93条)として無効になります。

考えにくいですが、たとえば株主総会で人員を減らしたと仮装するために使用者と労働者が共謀して嘘の退職手続をしたような場合は通謀虚偽表示(94条)として無効となります。

懲戒解雇や解雇事由がないのにそれがあると誤信させて労働者に退職届を書かした場合には錯誤(95条)詐欺(96条)により無効主張や取消ができます。

たとえば若い労働者を一室に押し留め、懲戒解雇にするぞと脅しながら長時間にわたって退職を強要したような場合は「脅迫」にあたり、民法96条によって取り消すことができます。

*不法行為を争う場合

前に述べたような例で、労働者を一室に押しとどめるような社会的に相当性を逸脱するような形での退職勧奨は不法行為を構成します。従ってその場合は損害賠償の請求ができます。
半強制的な退職勧奨や執拗な退職勧奨、等がこれにあたります。6※

このような場合、裁判所の判断基準としては退職に関して労働者の自由意思による決定を害したかどうかが重要な要素になります。したがいまして、そのような事情がない場合は不法行為になりません。同じ理由でたとえば、代わりに退職金をものすごく上乗せするなどの優遇措置をしているような場合は自由意思を害する程度が少なくなるとの判断で、不法行為としての違法性が減少するとされたことがあります。

また、これは団体的労使関係法上の問題となりますが、組合活動に関することを理由にしたり、条件にすることは不当労働行為を成立させる可能性があります。

<解雇の制限>


 解雇は最も争いの多い部分の一つです。解雇されると労働者は生活手段を失って、特に高齢になると再就職もなかなかできません。労働者としては、生活をしていく上で最も重大な局面になるわけです。この点は若いエリートの人事課員にはなかなか意識されづらい問題です(自分は解雇されても受け入れられる企業が多くあると思っているからです→人事課員は会社の利益も重視すべきですがこの点に対する配慮をすべきといえます)。

 先に違法な解雇について述べます。次に、形式上合法な解雇の場合でも、その相当性に問題がある場合が多くあり、この点を特に詳しく説明していくことにします。

○解雇の規制

期間の定のある契約の解雇※9

 期間の定のある契約の場合原則として契約の終了は契約期間の終了時になります。
このような契約の解雇とは契約期間の途中での解約、となります。もう一つ、契約更新の拒絶があります。

期間の定のある契約の途中解除は原則としてできません、できるのは、「やむを得ざる事由」があるときに解除(解雇)できるだけで使用者の責に帰すべき事由による場合は損害賠償の責任を負います。

黙示の契約更新がなされた場合、それ以降は期間の定のない契約と同様の扱いになります。つまり、そのような状態になると期間の途中でも解雇でき、解雇予告を必要とします。この条件は労働者にとっても同じになります※8。

このように黙示の更新がなされた場合でも期間の終了時の契約の解除には解雇予告は必要ありません。この場合の解雇予告はあくまでも、期間の途中に解除をして解雇をする場合の物です。
しかし、更新が幾度と無く続けられ、実質的に期間の定のない契約と同じになってしまったような場合は期間のない契約と同じとして扱い、契約期間の切れ目でも解雇予告を必要とするべしという考え方もあります。
この「期間の定のない契約と実質的に同じ」とは、<期間の定のある契約と、契約更新拒絶>のところで詳しく述べます。

また、期間の短い契約でいくつかの場合この解雇予告が不要とされる場合があります。参照:解雇予告を必要としない場合:雇用形態(21条)

期間の定のない契約の解雇

:解雇予告(20条)
期間の定がない場合、使用者は基本的にいつでも解雇することができます。 解雇をするには解雇をする30日前までに予告する必要があります。30日前に予告をしない場合はその短縮する分の平均賃金を支払う必要があります。

この解雇予告を必要としない場合がいくつかあります。一つは「天災その他やむを得ない事由」の発生、もう一つは「労働者の責にきすべき事由」の発生です。
「天災その他やむを得ない事由」とは、当該解雇につき使用者に対して予告期間を置かせるのが酷であるかどうかで判断されます。これは後で述べる妊産婦労働災害の解雇制限の場合のそれとは若干違うとされています。
「労働者の責にきすべき事由」とは、当該労働者が予告期間を置かずに即時に解雇されてもやむを得ないほどに重大な服務規律違反又は背信行為を意味します。これは懲戒解雇の要件とは違いますので、懲戒解雇が有効でも解雇予告を必要とする場合もあり得ます。

使用者としては、できるだけ、細かく判断して、懲戒解雇であれば即時解雇と安直に決めないで、そのうちの重大な物のみ行政機関に解雇予告除外認定を受けて即時解雇すべきといえます。このような細かな配慮をすることで、会社としては万一裁判に発展したとしても、裁判官に対する心証もよくなり、かなり有利に進められるはずです。

もう一つの要件に行政機関への届出(20条3項)がありますが、これは免罰的効力しかありませんので、労働者との関係としての解雇予告の問題とは別の物になります。

解雇予告を必要としない場合:雇用形態(21条)

また、解雇予告を必要としない雇用形態がいくつかあります。(21条)
(1)日々雇い入れられる者のうち、一ヶ月を越えて引き続き使用されるに至らない者(2)2ヶ月以内の期間(季節労働については4ヶ月)を定めて雇い入れられた者のうち、その期間を越えて引き続き雇い入れられない者。(3)試用期間の者のうち14日間継続して雇い入れられていない者
は解雇予告が必要ありません。これをみると長く雇う場合は常に必要となるといえますね。

:解雇予告に関するその他の問題

 解雇予告期間を置かないでなされた解雇は有効なのでしょうか?
会社が「首だ!!明日からこなくていい!!」と言った場合にそのようになるのですが、もちろん解雇事由がない場合には解雇権の濫用になり解雇そのものが無効になります。問題は解雇事由がある場合で、解雇事由があるが、即時解雇の要件を満たさない場合、解雇予告なしでされた解雇は果たして有効でしょうか。

〇藩兌圓即時解雇にこだわってその日に予告手当を支払うつもりもなく雇用契約が終了するような意味にとれる表示をした場合。このような場合はこの解雇の意思表示自体が無効となって雇用契約が継続していることを主張できます。
∋藩兌圓即時解雇にはこだわらないが即時解雇を通告した場合。このような場合は解雇の意思表示は有効になって30日後に解雇の効力がでます。
したがって、解雇を無効として争って出勤を続けた場合はその間の30日分の給料は請求できるが、その後の分は契約に基かない労務提供になるので賃金はもらえません。
逆に、解雇は仕方がないとあきらめ、労務提供を断念して解雇予告手当を請求しようと考えた場合はどうか。原則として、労務提供がないので賃金の発生がないので予告手当はもらえません。
そのかわりに労基法20条違反に基く114条の命令を裁判所にしてもらうことでその分の手当をもらえます。※10

:制限
  法的に解雇をしてはいけないとされている場合があります。

:妊産婦、労働災害時(19条)
妊産婦
 労基法65条の産前産後休暇中とその後30日間は解雇をしてはいけません。
労働災害
 労働者が業務上負傷した場合はその療養にかかる期間及び、その後30日間は解雇してはいけません。(19条1項)

これは解雇予告はいいが、解雇の効力そのものはこの期間後であることを必要とするという意味です。ですから、産休中、労災療養期間中は解雇予告をしてはいけないという意味ではありません。

ただし、労働災害の場合、打切補償(81条)をしたときはこの規制は及ばないとされています。(19条1項但書前段:労災保険法19条)
また、産休、労災、双方の場合で、天災その他やむを得ない場合事由のために事業の継続が不可能となった場合は除外ができます。この場合、企業は行政官庁に認定を受ける必要があります(19条2項)、そうしないと罰則があります(免罰的効力)。ただし、この認定とこの効力とは無関係なのでお互いに注意が必要です。

:差別的取扱の禁止

労働基準監督署などの機関に法律違反の事実を告げたことによる不利益取扱いとしての解雇はする事ができません。(104条2項)これは解雇権濫用にも当たりますが、同時に刑罰の対象にもなります(119条1号)。
解雇制限とは直接書かれてはいない物の差別的取り扱いによる解雇は無効となります。そのため、労基法上の差別禁止規定3条や男女平等取り扱い法理、女子労働者に対する差別的解雇禁止規定(均等法11条1項)なども解雇制限の意義を持ちます。

これに違反する場合は解雇が法例違反の公序良俗に反することとして無効になる可能性があります。

:労組法の規制

労働組合活動をしたことによる解雇は無効であると同時に不当労働行為となります。また、損害賠償を請求する上での違法性を持つことになります。

:労働協約による規制

労働協約も重要な物です。労働協約にはたとえば労働者を解雇する前に組合と協議をするようになっていたり。労働協約で解雇事由を制限していたり、解雇に対する苦情処理手続が定められていたりする場合があります。

この点は組合によってまちまちなので労働組合に問い合わせるのがよいと思います。

:解雇権濫用法理改め解雇権濫用条文→後述

その他解雇権濫用法理による制限があります。この解雇権濫用法理は重要なのでこの後に単元を一つとって詳しく述べます。

<解雇権濫用法理改め解雇権濫用条文>


日本の会社は解雇がしにくいと言われます。アメリカではがんがん解雇が行われるのに日本では終身雇用が定着していて解雇がなかなか行えないと・・・
(アメリカの事情については実際は必ずしも解雇が簡単というわけではありません。)

これは私法上の契約の原則から言えば契約の当事者はお互いに対等であって契約の解除に関しても同等の権利を有するのが原則です。
しかし、裁判所はそれでは一方の利益に対してもう一方の不利益が大きくバランスがとれないと判断して、利益と不利益のバランスが大きく違う場合に利用する権利の濫用(民法1条3項)を使い解雇権の行使を制限しました。

現在では、労働基準法を根拠として解雇権の濫用を規制します。平成16年の改正で盛り込まれましたが、運用上内容が極端に変わることはないと思われます。具体的に就業規則上の「普通解雇事由がある場合に置いても、使用者は常に解雇しうる物ではなく、当該具体的事情のもとに於いて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当な物として是認することができないときは、当該解雇の意思表示は解雇権の濫用として無効になる」としてかなり解雇権の行使を制限しています。

これではどんな場合が解雇権の濫用になるかわからないので具体的に解雇が求められる場合をみてゆきます。大きく分けて4っつに分類されるようです。

解雇が認められる場合(菅野説による分類※12簡単な言葉になおした)

(1)労働者が働けない状況になったり、働くのに必要な能力がなかったり無くなったりした場合があります。
これは、傷病のために働くための能力が無くなったり、障害がでた場合。さぼってばかりいて勤務成績が悪かったり、重要な経歴の詐称によって使用者との信頼関係が壊れた場合も含まれます。

この能力については、新入社員の場合は即戦力としての総力を期待すべくも無いので、能力欠如は経歴詐称や面接における重大な嘘がない限りなかなか認められませんが、課長を募集したり、専門能力者を中途採用で採用した場合などはその即戦的能力を期待されているので、それがない場合は解雇事由としての能力欠如が比較的簡単に認められます。

(2)就業規則などの規律に違反した場合。
この内容は懲戒のところで述べた物と同じです。懲戒として懲戒解雇でなく普通解雇にする場合などがこれに当たります。

(3)経営上の必要がある場合。
傾斜が傾いて、人員整理をしなければならない場合や、合理化のため部署を無くしたが、代わりに配置する部署などもない場合。(詳しくは整理解雇)

(4)労組法上のユニオンショップ協定に基く解雇。
労働組合と会社が「労働組合員でない者は首にする」という協定を結ぶことがあります。そこで、労働組合を脱退したことを理由とする解雇が成立します。この場合、問題になりやすいのが組合が不都合な人間を労働組合から除名して解雇を会社に要求した場合などです。
この問題は現在争いが大きいので詳しくは述べませんが、このような解雇があり得ることだけ述べておきます。機会がありましたら解説します。

以上の(1)〜(3)についてはその程度を、非常に重大な程度になっていて労働者の側に考慮すべき事情が無い場合に限って解雇が認められることになっており、非常に厳格になっているといえます。

<解雇が不当な場合の主張>

○解雇の無効を主張する。

:方法
裁判所に「労働者としての地位の確認」をする方法で行います。使用者は解雇による契約関係の終了を主張しますから、その解雇の無効を主張して労働者としての地位を認めてもらいます。

このような裁判の場合、立証責任は原則として原告にあります。しかし、解雇事由を一番知っているのは使用者であるので、一部につき使用者に立証責任を負わせる扱いをするのがこのような裁判では一般的です。とはいえ、やはり最終的には解雇権の濫用につき、立証責任は原告労働者にあるので、労働者は十分な準備をする必要があります。

:効果
解雇が無効になると労働者としての地位が解雇されたときに遡って回復します。そのため、解雇から判決を得るまでの賃金がもらえます。これは労働契約があるのに使用者の責任で労働義務が提供できなかったので、賃金支払義務だけが残るという双務契約の性質に基く請求権です。

この金額は平均賃金となります。したがって、この中には経費としての意味合いのある交通費などは引かれ、実際に働くことではじめて発生する残業代などはここには含まれません。

中間収入
解雇されて裁判で争っている期間中、労働者は生計の手段がないので他の会社でやむを得ず他の会社で働くことがあります。その際、その利益はどうなるのでしょう。

民法の原則からすれば、特に解雇が無くても得られたような利益でない限り、その分はもらえるはずの賃金から引かれます。(民536条2項、法的には使用者に償還)しかし、使用者の責に帰すべき休業の場合も賃金の60%をは払う義務があります(26条)。したがって、その分を除いた分の40%を限度として、もらえるはずの賃金から引かれます。その計算の単位はその賃金を得るために労働期間を単位として他の期間の分を引くことはできません。

-------------------------------------もらえるはずの平均賃金
******************************
******************************
******************************
******************************
******+----+******************
******|****|******************←ここを越えた分は働いていたとしても
-*+*-*+*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- - - -40%の賃金     引かれない
**| |******************
**| +---------------+** 全体がならされるのではなく、その
+-+ 枠の中が解雇期間中に |** 期間ごとに計算される。
| 働いて得た収入 |**
-------------------------------------

****        判決
このうちの**** の分が実際に支払われるべき賃金
****

ちょっとこのような計算になる理由がわかりにくいと思いますが、この説明はきわめて私にはわかりにくく説明しづらいです。機会がありましたら解説します。

とはいえ、労働者としては使用者が勝手に解雇したのにその期間中働いた分が引かれてしまうのは働かない方がよくなってしまいおかしいのではないか?と考えるかもしれません。
しかし、基本的に使用者が支払うのはその責任に基く「損害」です。もともと働いて得るべき賃金があったのですから、労働者としては本来の目的の通り、働いて賃金を得ることができたのですからその分は「損害」とならないのです。ですから損害が発生しない分が引かれてもおかしくはないことになります。とはいえ、全部では弱い労働者が不利なので休業手当分を除いた分に限ったわけです。(このような結論にするために非常に技巧的な法律的論理操作をしています。)
したがって、使用者側と労働者側のバランスをとるためにこのようになります。

:不法行為

使用者の無効となるべき違法な解雇は損害賠償としての不法行為となることがあります。つまり、もらえるはずだった賃金とは別に、解雇によって雇傭を続けていられるはずだった利益や、名誉を侵害するとして使用者に故意過失があれば損害賠償の請求ができます。
この場合、無効となる解雇は当然に不法行為となるのではなく、個別に判断されます。また、立証責任は解雇の無効を主張する場合に比べて若干厳しく、労働者が和にすべてあります。

失効の原則

解雇が無効と言うことは、解雇がなかったということです。無効が有効になることはありません。したがって、労働者が無効な解雇を受けた場合でも、退職金を受け取り、他の会社に就職して何年もたっているような場合でも、無効な解雇は無効で、労働者は無効を主張できるはずです。しかし、このようにいろいろな事情から労働者が解雇を受け入れたと判断できるような、場合は今度はそのような無効主張は今度は労働者側の権利の濫用としてできなくなります。
<整理解雇>

整理解雇は別名を指名解雇(かたたたき)などともいい、会社を辞める意志のない人を指名してやめさせる物を言います。
希望退職を募って人員を削減する場合はここに言う整理解雇には含みません。
人員整理の方法としては一般的にはまず、人員配置を変えてみる、出向などを試みる、期間の定のある労働者の削減を図る、希望退職者を募る、指名解雇をする。というような順番になります。

指名解雇はやめる気のない人をやめさせるわけですから、当然慎重になる必要があります。

会社が傾いて合理化の必要があるときに多くの会社が人員整理をします。これは会社の経理のうち人件費の占める割合が大きく、なおかつ労働者一人にかかる年間の経費が莫大であるために速効がある方法として行われるからです。

このような整理解雇は日本の終身雇用制度おかげでできるだけ解雇はさける方向で要件が確立してきました。
判例の積み重ねによってできあがってきた要件をみてゆきましょう。

:人員整理の必要性
この必要性は会社が経営不振で傾いていたり、処置としてやむを得ない物であることが必要です。

ここの要件は裁判に於いて具体的に詳細に検討されますが、

:解雇回避努力の有無
解雇を回避する努力をまずしていることが必要です。たとえば、人員配置の転換によって解雇をさける努力をするとか、一時帰休で少し休業してみたり、出向先がないか探すとか、まずは希望退職を募るとか、臨時的な雇傭関係にある人から契約を切るなどをしているか。などが必要になります。
特に重要なのが希望退職を募ることと、臨時的な雇傭を削減することです。

これら全部をする必要はありませんがそれなり(真摯かつ合理的)の努力をしないとほとんどの場合解雇権の濫用になります。13※

:被解雇者選定の妥当性

解雇者を選ぶに当たっては合理的で客観的な基準を設定して公正に適用して選ぶことを必要として、何にも基準を設定しないでなされた整理解雇は無効とされます。

具体的には判例上、たとえば成績不良とかの基準は合理性が低いとされ、欠勤や遅刻が多い規律違反歴があることや、経済的打撃という物は合理性があるとされやすいです。経済的打撃は、たとえば独身者などは経済的打撃が小さいが、妻子がある場合は打撃が多いという基準が考えられます。また、退職金の上乗せなどがあることを理由に定年退職間際の人を選んだ物も合理性があるとされたものがあります14※

:協議,説明の有無
手続的な要件として、事前の説明や協議をすべきといえます。労働協約などでそのような協議をするように定められていた場合はこれをしないと権利の濫用になります。また、ない場合でも事前の説明はある程度しておかないと権利の濫用とされる場合もあります。

<その他解雇>

○懲戒解雇

懲戒解雇については解雇のとことを参照ください
基本的には普通解雇の要件を満たした上でさらに懲戒となるべき要件が必要です。

詳しくは懲戒のところを参照ください。

○変更解約告知

聞き慣れない言葉ですがどういう物かと言いますと、「契約をなおして労働条件の変更に応じるかそうでなければ会社を辞めてくれ」と言う物で、労働条件と解雇、これを究極の選択のような感じでえらばせるものです。

ドイツをはじめとする外国で多く行われてきた物で、雇用契約が日本と違って多くは仕事の内容や勤務場所が細かく決まっているから必要とされてきた物で、その救済のための救済訴訟の方法が用意されています。
日本ではそのような立法はありません。

日本ではこのような典型的なドイツ型変更解約告知は原則として有効とはなりません。労働条件の集団的変更には就業規則の変更という手段があるからです。しかし、要件として整理解雇などの要件を満たしており、解雇回避の方法として提示された条件が相当で合理的な物の場合は、普通の整理解雇として有効になることがあります。
労働条件変更の合理性とそのための解雇の相当性を別個に検討する必要があります。

つまり、外形的には変更解約告知の方法を使う整理解雇というのはあり得るわけです。

<期間を定めた契約と契約更新拒否>

期間の定のある契約に於いて期間の終了時にそのまま契約を終了することです。
原則として有期契約の更新拒絶は普通にできます。ここには解雇権濫用法理は普通及びません。
つまり、期間の定がある場合は期間の終了とともに契約が切られても文句があまり言えないと言うことです。しかし、契約時に無条件に継続されるようなことを言われて、労働者もそれを期待してしまうような内容であった場合は、解雇権濫用法理が「類推」されて更新拒否を正当化するような特段の事情がひつようになります。この基準は比較的緩やかで期間の定のない雇傭よりは契約拒絶が認められやすいです。

例外として解雇権濫用法理が及ぶ場合があります。契約更新の時になにもお互いに言わないで無条件に契約が更新され続けて何年も何年もたってしまったような場合で契約が期間の定のない契約と同視できれば、解雇権濫用法理の類推適用があります。

整理解雇の際
期間雇用労働者の場合は何度も契約を更新されて期間の定のない契約と同じようになってしまった場合でも、期間の定のない契約で採用された人と比べればやはり劣後してしまい、期間の定のない契約の人たちに希望退職を募るに先立って、解雇されるのも仕方がないとされています。15※

試用期間とされる期間雇用契約

採用される際、一年間の契約にしてまず、働いてみて様子を見てその後本契約ということにするという取り決めをすることがあります。
その場合期間を定めた契約ですから、その労働者が若干能力が足りない場合契約を更新しないことができます。しかし、これは不当です、試用期間であれば期間の定のない契約が結ばれたことになり、この解除は限られた場合にしかできません。でも、このような契約にすれば期間雇用ですから比較的要件の厳しくない更新拒絶をすればいいわけです。
このよう場合は、このような期間の契約は期間の定のある契約ではなく、試用期間そのものであるとして、試用期間中の解除の要件を満たさない場合、契約の更新拒絶は権利の濫用になります。

参照:<期間の定めのある契約の終了>期間の終了と自動更新:も参照ください。

1※法令:高齢者雇用安定法,平成10年4/1日施行
2※大栄交通事件,最2小判昭和51,3,8
3※人事部長に承諾能力があった判例:大熊鉄工所事件
  人事部長に承諾能力が無かった例:岡山電気軌道事件
4※判例:昭和自動車事件福岡高判昭和53,8,9
5※判例:ケインズインターナショナル事件東京地判平成4年9,30
6※判例:下関商業高校事件最高裁昭和55年7、10第一小法廷
    :百選72事件
7※判例:小料理屋「尾婆伴」大阪地決
8※参照:前述→期間の定のある契約:期間の終了と自動更新
9※参照:労働者からの解除の場合→期間の終了と自動更新:
10※判例:プラス資材事件:東京地判51年12,24
11※判例:細谷服装事件:最高裁昭和3,3,11:百選148p
12※引用:菅野労働法4版405p以下
13※判例:朝日保育園事件最高裁一小昭和58,10,27
14※判例:三井石炭鉱業事件、福岡地裁平成4,11,25
15※判例:日立メディコ事件、最小1昭和61、12,4
全体につき:菅野57p,384〜409p
百選:152p東洋酸素事件:150p高知放送事件:146p下関商業高校事件

h o m e n e x t
このページに関する質問意見は naoki-k@ss.iij4u.or.jp